何時ものように仕事を終え安部川沿いに車を走らせると、真っ暗な中に何時もは無い明かりが見えた。近づくとおとり鮎≠ニのぼりを立てた釣り道具屋である。「そうだ、今日は鮎の解禁なんだ!」 鮎解禁と言う声を聞くと、オイラの中では 「いよいよ夏の始まりなんだなぁ」 という思いが沸いてくるのだ。店の中には夜明けを待ちきれずに集まった太公望がなにやら楽しげに話し込んでいた。きっとそのまま夜明けを待ち、寝ずに竿を振るのだろう。わかるなぁ〜その気持ち!・・・そしてオイラは、あまごを釣るために峠を越えるのである。

以前来た時に竿をたたんだ所から釣りを始めようと決め、絶好なポイントで誘惑に負そうに成りつつも何とか歩き飛ばす事が出来た。今日は最初餌釣りから始めるつもりでいたのだが、目の前にはテンカラに良さそうな瀬が続くポイントなので、迷わずテンカラ竿を取り出した。丁寧に毛鉤を打っていくが全く反応が無く、暫くすると落ち込み下の淵が現れたので、ここで餌釣りに変える事にした。
仕掛を流す場所を少しづつ変えながらじっくり探ると、目印が流れとは逆方向に動き出したので合わせを入れると良い手応えである。慎重に寄せて来ると魚体が見えた。良型である!が、むこうも必死で抵抗する。クルクルとまわりながらラインを切ろうとしているのだ。慎重に慎重に寄せて取り込む事に成功した。
タモの中で鉤をはずし、うっとりと魚体を眺めその精悍な顔付きに喜びが込み上げて来ると同時に 『尺ありそうだ』 と言う思いがますます現実味をおびて来た気がした。早速メジャーをあてて見ると、僅かに5_足りない29.5cmであった。それでも少し鼻の曲がったカッコイイ顔付きのあまごを釣りあげる事が出来て、すでに大満足なのである。


このカッコイイあまごの写真を撮ろうと思ったのだが、2枚撮った直後油断した隙に逃げられてしまった。と言うか溜まりからゆっくりと体制を変えて、深い淵に向けて泳いで行ったのだが、その間なぜかオイラは逃げようとするこのあまごを遮ろうとはしなかった。何故なのかは分からないが、その時は写真なんてどうでも良いと思ってしまったのである。元々キープするつもりは無かったのだが、ただ単にオイラがボーっとしていただけなのか、或いはこの魚がオイラをそうさせる不思議な何かを持っていたのか、、、

沢山の釣り人から逃れ、厳しい自然を生き抜きそして何時しか大あまごへと成長する。  きっとこんな奇跡のような魚は不思議な何か≠持っているのかもしれない。そしてこれからもあのあまごは数々の危機をその力で掻い潜り、人知れず大あまごへと成長して行くのだろう。今日出会ったあのあまごは、きっとそんな特別なあまごなんじゃないかと、帰路の薄暗いゴルジュを遡行しながら考えていた。


































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